この記事では社会保険(公的保険)の中の医療保険を扱います
民間保険については扱いませんのであしからず
社会保険の種類
社会保険は大きく2つに分類され、さらに細分化されると5種類になります
社会保険(広義)
社会保険(狭義)
- 医療保険
- 介護保険
- 年金保険
労働保険
- 労災保険
- 雇用保険
医療保険の基礎|公的医療保険
公的医療保険とは、医療費(病院や薬局の費用)の一部を保険が負担してくれる制度です
病院などで保険証を提示するやつですね
保険証を提示することで、医療費負担が軽減されています
公的医療保険は以下の3つに分類されます
公的医療保険
- 被用者保険(健康保険・共済組合等)
- 地域保健
- 後期高齢者医療制度
被保険者:保険の適用を受ける者(保険で守られる人)
保険者:保険を運用する者
被用者保険
被用者保険は被雇用者(雇用されている人)に適用されます
被雇用者には、民間企業のサラリーマンと公務員が該当します
被保険者:サラリーマン(+その被扶養者)
保険者:全国健康保険協会 or 健康保険組合
被保険者:公務員など(+その被扶養者)
保険者:共済組合など
地域保健
地域保健は自営業者に適用されます
自営業者が加入する地域保健は国民健康保険です
被保険者:自営業者など
保険者:都道府県 and 市町村 or 国民健康保険組合
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度は75歳以上の人に適用されます
(場合によっては65歳以上に適用)
被保険者:75歳以上の人
保険者:後期高齢者医療広域連合
医療費の自己負担
公的医療保険での医療費の自己負担の割合は年齢や収入によって変化します
各年齢の医療費負担割合は以下の通りです
年齢 | 医療費の自己負担割合 |
---|---|
0歳~5歳(義務教育前) | 20%負担 |
6歳~69歳 | 30%負担 |
70歳~74歳 | 20負担 (現役並みの所得がある場合30%負担) |
75歳~ | 10%負担 (現役並みの所得がある場合30%負担) |
健康保険の基礎|サラリーマン必読
健康保険は、被保険者(被雇用者)とその被扶養者(家族)のケガや病気、死亡、出産に対して保険給付を行うものです
日常生活での医療機関受診等に適用されます
ただし、勤務中のケガなどは別途 労災保険で扱われるため対象外となります
健康保険の保険者
健康保険の保険者には全国健康保険協会と健康保険組合があります
全国健康保険協会が管理する医療保険は協会けんぽと呼ばれ、主に中小企業のサラリーマンが加入します
健康保険組合が管理する医療保険は組合保険と呼ばれ、主に大企業のサラリーマンが加入します
加入している医療保険によって保険料の比率が変わってきます
健康保険の保険料
健康保険の保険料は被保険者の標準月額報酬と標準賞与額に保険料率を掛けて計算されます
会社から標準月額報酬の決定通知が送られてきたことないですかね?
計算された保険料については、雇用者と被雇用者が50%ずつ折半して支払いを行います(労使折半)
保険料率は加入している健康保険により異なります
保険料率は都道府県ごとに異なる
組合が決定する
(被保険者の負担割合を50%超にすることはできない)
ただし、産休期間及び育休機関は社会保険料(医療保険料を含む)が免除されます
免除には事業者(会社)の申出が必要
健康保険の被扶養者
被扶養者は被保険者の健康保険の適用を受けることができるため、別に医療保険に加入する必要がありません
被扶養者の要件
- 同一生計親族等
- 国内に住所を有すること(国内居住要件)
- 年間収入:130万円未満(60歳以上、障害者は160万円未満)
- 年間収入:被保険者の年間収入の50%未満
上記の条件をすべて満たす必要がある
被扶養者から外れてしまった場合には別途医療保険に加入する必要が発生します
つまり、パートで働く方や、アルバイトで働く学生さんが130万円以上の年間収入を得てしまうと、別途医療保険の保険料を払わないといけなくなります
所得税等の配偶者控除や扶養控除は103万円以上で適用外となります
混同しないように注意しましょう!
健康保険の給付内容
主な給付内容は以下のとおりです
健康保険の給付内容
- 療養給付
- 高額療養費
- 出産育児一時金
- 埋葬料
- 出産手当金
- 傷病手当金
療養給付
ケガや病気により病院や薬局で医療行為を受けた場合に給付されます
基本的には、発生した医療費の70%が保険から給付されるため、自己負担は30%となります
高額療養費
高額療養費制度は、医療費の月間の自己負担額が一定額を超えた場合に、返金を受けることができる制度です
高額医療費の自己負担額(70歳未満の場合)の計算は以下のとおりです
標準月額報酬 | 自己負担限度額 |
---|---|
住民税非課税世帯(低所得者) | 35,400円 |
~26万円 | 57,600円 |
28万円~50万円 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×0.01 |
53万円~79万円 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×0.01 |
83万円~ | 252,600円+(総医療費-842,000円)×0.01 |
窓口で支払った額ではなく
保険で支払う分も含めた総額を1ヶ月分を合算する
出産育児一時金
出産育児一時金は、被保険者または被扶養者が出産した場合に支払われる給付金です
子供1人につき、42万円が支給されます
埋葬料
埋葬料は、被保険者または被扶養者が死亡し、埋葬を行う場合に支給されます
支給額は5万円です
出産手当金
出産手当金は、被保険者が出産のために仕事を休み、給料が減った場合に支給されます
給料が減った場合の手当金のため、被扶養者は対象になりません
支給期間は以下のとおりです
1
出産前の42日間(多胎妊娠は98日間)出産後の56日間
1日あたりの支給額はざっくり、もとの給与の2/3です
以下の計算式で算出されます
直近12ヶ月の標準報酬月額の平均÷30日×2/3
傷病手当金
傷病手当金は、被保険者がケガや病気で仕事を3日間以上連続して休み、給料が減った場合に支給されます
給料が減った場合の手当金のため、被扶養者は対象になりません
また、給料が減った場合の支給のため、有給休暇で3日以上休んでも対象になりません
支給期間:4日目~1.5年
1日あたりの支給額はざっくり、もとの給与の2/3です
以下の計算式で算出されます
直近12ヶ月の標準報酬月額の平均÷30日×2/3
退職時の医療保険の任意継続
医療保険加入者が退職する場合に、退職後2年間は退職前の健康保険に加入することができます(任意)
退職後は労使折半が適用されないため、保険料が全額自己負担となります
退職後に医療保険を継続する要件は以下のとおりです
健康保険に継続して2ヶ月以上加入していた
退職から20日以内に申請
つまり、入社直後に退社した場合は、継続加入することはできません
国民健康保険の基礎|自営業者は知っておきたい
国民健康保険は、健康保険の提要を受けない被保険者(自営業者や未就業者)のケガや病気、死亡、出産に対して保険給付を行うものです
被保険者は被雇用者ではないため、会社単位ではなく、市区町村単位となります
国民健康保険には被扶養者という考え方がなく、加入者全員が被保険者となります
国民健康保険の保険者
国民健康保険の保険者は以下の2つがあります
都道府県と市区町村の共同
国民健康保険組合
国民健康保険の保険料
保険料は市区町村により異なります
前年の所得を元に計算されます
国民健康保険の給付内容
健康保険から出産手当金と傷病手当金を除いたものが給付内容です
国民健康保険の給付内容
- 療養給付
- 高額療養費
- 出産育児一時金
- 埋葬料
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度は、75歳以上の人が被保険者となります
(または65歳以上で障害認定を受けた人)
後期高齢者医療制度には被扶養者という考え方がなく、加入者全員が被保険者となります
後期高齢者医療制度の保険者
後期高齢者医療制度の保険者は、後期高齢者医療広域連合です
各都道府県に1団体が設置されています
後期高齢者医療制度の保険料
後期高齢者医療制度の保険料は後期高齢者医療広域連合で決定されます
基本的に年金から天引きされるため、支払い等の手続きは発生しません